「最近、うちの子が『算数が難しい』と言って悩んでいるんです。」
小5のこの時期、保護者の方からこのように相談されることがあります。
夏前までは、小学校内容の『先取り』が中心でした。
そして9月以降、いよいよ中学受験算数の本格的な勉強に入っていくことになります。
そのため、特にこの時期に算数が難しく感じる生徒が多いようです。
先週のテキスト第6回は「図形の回転移動」を扱いましたが、
ここは生徒達が特に苦手にする単元の一つです。
なぜなら、
@ 自分の頭の中で、図形の移動を『正確にイメージ』しなければならない。
A 『イメージ』した移動の軌跡を、『正確に図に表す』ことが求められる。
B 複雑な円・おうぎ形の面積計算などを『正確にこなす』必要がある。
・・・とまあ、生徒達にとって越えなければならない『関門』が多いからでしょう。
ところで、授業で扱っている問題のレベルは、どの程度のものなのでしょうか。
具体的にイメージを持っていただくために、実際の入試問題と比較してみたいと思います。
次の問題は、新演習テキスト第6回@の例題1です。

上の図のような直角三角形ABCを、頂点Cを中心として、矢印の方向に90度回転させました。
円周率を3.14として、次の各問いに答えなさい。
(1) 頂点Aが動いたあとの図形の面積は何cmですか。
(2) 直角三角形ABCが動いたあとの図形の面積は何平方cmですか。
(3) 辺ABが動いたあとの図形の面積は何平方cmですか。
特に(3)は、入試でもお目にかかることの多い問題だったりします。

上の図のように、一部分を移動させて『2つのおうぎ形の面積の引き算』にもちこむのがポイントです。
次の問題は2013年度ラ・サール中入試、大問2の(3)です。

上図の三角形DECは、3辺の長さが5cm、12cm、13cmの直角三角形ABCを、
頂点Cを中心にして90度回転したものです。
斜線部分の周の長さと面積を求めなさい。円周率は、3.14とします。
面積を求める問題は、例題1(3)と全く同じ考え方ですね。
他にも、例えば次は新演習標準編テキスト、第6回Aの練習5です。

上の図のような直角三角形の辺上を、半径1cmの円がすべることなく転がって1周します。
円周率を3.14として、次の各問いに答えなさい。
(1) 円の中心Oが動いたあとの線の長さは何cmですか。
(2) 円が動いたあとの図形の面積は何平方cmですか。
(1)は『図形の周の長さ』+『転がした円の円周』になることが、図を描けばわかります。
また、(2)は『(1)の答え』×『転がした円の直径』で求められることを授業で説明しました。
T組の授業で長方形を例に解説した際に、(1)(2)ともに『凹みのない多角形』であれば言える話だということを含めて説明しましたので、円がまわる図形が三角形になっても、だいたいの生徒達は特に問題なく取り組めていたようでした。
そして、次は2013年度共立女子中入試、大問3です。

上の図のように、半径2cmの円が、正五角形のまわりを離れないように1周します。
次の各問いに答えなさい。
(1) 円の中心Oが動いた長さは何cmですか。
(2) 円が動いた部分の面積は何平方cmですか。
テキスト第6回Aの練習5の図形が、三角形から正五角形に変わっただけですね。
練習5が解けた生徒には、何の苦もなく取り組める問題だと思います。
ここまで見てきたとおり、小5アタックの算数は受験を意識した内容に入ってきています。
例題も、ある程度の難易度の学校では、そのまま入試問題として出題されてもおかしくはないレベルです。
だからこそ、難しいと感じること、それは『当たり前』の感覚だと思います。
無論、大事な内容ですから、できる範囲で理解し定着させていくことは大事なことです。
焦りを感じたり、つらい時期があると思いますが、あきらめずに一つずつ確実に身につけていきましょう。
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・2013年度ラ・サール中・大問2(3)の答え
周の長さ:52.26cm 面積:113.04平方cm
・2013年度共立女子中・大問3の答え
(1)62.56cm (2)250.24平方cm